インプラント患者への歯周リスク評価の応用
インプラント患者への歯周リスク評価の応用
―歯周サポート治療の内容と頻度を決定する目安として―
Application of periodontal risk assessment(PRA) for perio-implant patients
-for proper periodontal supportive therapy-
○ 高田 尚美,清野 敦子,青沼 直,加藤 義浩,根岸 邦雄
○ TAKADA N, KIYONO A, AONUMA S, KATO Y, NEGISHI K
NPO 法人埼玉インプラント研究会
NPO Saitama Implant Association
Ⅰ目的: 歯周病患者に対してインプラント治療を行う場合,非歯周病患者よりもリスクが高いことが知られている.しかしながら注意深い歯周サポート治療(以下SPT)を継続した場合には非歯周病患者に劣らぬ成功率をおさめたという報告もなされている.今回演者らはインプラント治療終了後メインテナンス期に入った患者に歯周リスク評価を行い,効果的なSPTの内容と頻度を決定する可能性について考察した.
Ⅱ対象および方法: インプラント治療を終了した患者の歯周精密診査の後,2003 年Langらによって提唱されたPeriodontalRisk Assessment (以下PRA)に準じ歯周リスク評価をおこなった.診査項目として,プロービング時の出血の割合,4mmを超えるポケットの残存する部位数,全28歯からの喪失歯数,骨吸収と患者の年齢の比率,全身的・遺伝的な状態,環境因子として喫煙の有無や本数を評価し,低・中・高リスクの判定を行い,各々のリスクに応じたSPTを実施した.症例1)56歳男性,広範性慢性重度度歯周炎.2001 年17,15,13,12,22,24,25,27相当部インプラント支持の固定性ブリッジを装着.2006 年PRAにより評価し,高リスクと判定した.SPT間隔は3ヵ月に一度.症例2)54 歳女性,広範性慢性重度歯周炎.1999 年14,13,11,21,23相当部インプラント支持のオーバーデンチャーを装着.2006 年PRAにより評価し,高リスクと判定した.SPT 間隔は3 ヵ月に一度.
Ⅲ結果: 症例1)2012 年10 月術後11年を経過した.症例2)2012年10月術後13年を経過した.インプラントの生存率はともに100% である.
IV考察および結論: Claffeyは積極的な歯周治療終了後に得られた健康状態に応じた新たなベースラインが設定されるべきだと述べている.歯周病患者のインプラント治療後に歯周精密診査および歯周リスク評価を行い,各々のリスクレベルに応じたSPTを実施することはインプラント周囲炎を予防し,治療の長期安定性に寄与する.