エナメル上皮腫開窓術後にインプラント治療を行った1例

O-48 エナメル上皮腫開窓術後にインプラント治療を行った1例

A case of dental implant treatment after marsupialization of mandibular ameloblastoma

○ 栗原 和博1),大畑 仁志2),栗原 一雄1),海野 幸利1),原 一史1)
○ KURIHARA K1), OHATA H2), KURIHARA K1), UNNO Y1), HARA H1)

1)NPO 法人埼玉インプラント研究会,2)町田市民病院口腔外科
1)NPO Saitama Implant Association, 2)Department of Oral and Maxillofacial Surgery,Machida Muncipal Hospital

Ⅰ目的: 近年,顎口腔領域における腫瘍性疾患等の治療後の欠損補綴法として,インプラント治療が報告されている.今回我々は右下顎骨に広範囲に認められたエナメル上皮腫に対し開窓術施行後にインプラント治療を行い,咀嚼機能を回復し,良好な結果が得られたので報告する.

Ⅱ症例の概要: 55 歳女性,平成17 年6 月,近歯科医院にて,右下顎骨犬歯部より右下第一大臼歯におよぶX線透過像を指摘され紹介来院した.CT所見では右下顎骨骨体部に40×20mmの楕円形透過像が認められ,頬側皮質骨は膨隆し菲薄化を認めた.またその前方には蜂窩状の隔壁構造が認められた.同年7月生検施行,エナメル上皮腫・濾胞型・棘細胞腫型との病理組織学的診断を得た.術前に右下歯槽神経支配領域には知覚鈍麻が認められた.病理診断より病変は浸潤傾向を示しており顎骨離断,再建も検討したが整容的な観点から開窓術を選択した.術後骨欠損部は順調に回復していたが,術後25ヶ月後腫瘍中心相当部歯肉に残存した直径4mm大の腫瘤を認め摘出,前回と同じ病理組織学的診断を得た.欠損部補綴は患者の意向および骨欠損部の回復を考慮し,腫瘍のあった部分を可能な限り避け,アストラテックインプラントを2本埋入し,ボーンアンカータイプの術者可撤式義歯を装着した.

Ⅲ結果: 平成20年2月最終補綴物を装着.1ヵ月後,3カ月後,6ヵ月毎のメンテナンスを行い,約4年半経過した現在,インプラント周囲の組織および腫瘍開窓部も良好な結果を得ている.

Ⅳ考察および結論: 腫瘍性疾患により広範囲の骨欠損を生じた患者に対してのインプラント治療は,腫瘍の再発等を考慮すれば,積極的に勧められない部分もある.しかし,腫瘍再発等種々の要素を総合的に判断する必要はあるが,インプラント治療は患者の社会復帰上,有効な顎骨欠損後補綴であると思われる.